第9回日本ラブストーリー大賞 1次選考あと一歩の作品(2)

『さゆり』/宇野 布佐子 

 あらすじ&コメント

父の死をきっかけに大阪に行き、ホステスになった主人公のさゆりの恋愛と成長を描いた作品。冒頭、カフェで啓一という謎めいた男からスカウトされるシーンが魅力的で、「啓一はなんの目的でさゆりをスカウトしたのだろう?」とページをめくる手が早くなりました。しかし、結末はあっけなく、拍子抜けしてしまいました。裕樹を除いて登場人物のほとんどが「いい人」という設定も、ストーリーを退屈にしている理由かもしれません(ラスト近くで視点をさゆりから啓一に変えてしまう部分もちょっとした傷になっています)。冒頭のカフェのように魅力的なシーンを書く力があるのですから、そうした印象的な場面をもっとたくさん作り、それを効果的につなげていけば、傑作ができあがるでしょう。腕を磨いて再チャレンジしてほしいです。

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